姜湖宙詩集『湖へ』が第57回小熊秀雄賞を受賞することに決定しました。

このたび、当発行所から刊行した姜湖宙詩集『湖へ』が第57回小熊秀雄賞を受賞することに決定しました。

小熊秀雄賞市民実行委員会URL:http://blog.livedoor.jp/ogumahideo/archives/52193517.html


第57回小熊秀雄賞決まる

更新日:2024年04月20日


京都市の姜湖宙(カン・ホジュ)さんの詩集『湖へ』に

5月11日に贈呈式

村田裕和・旭教大教授が記念講演


 第57回小熊秀雄賞の最終選考会が13日夕、旭川市高砂台の旅館「扇松園」で行われ、姜湖宙さん(27歳京都市)の詩集『湖へ』(書肆ブン)を選出しました。

 対象は、2023年1月から12月末までに刊行された詩集。全国から121点の応募がありました。実行委員会による一次審査、最終選考委員による二次審査を経て、6点の詩集がこの日の選考会にノミネートされました。

 選考委員は、アーサー・ビナード(詩人・エッセイスト)、佐川亜紀(詩人)、堀川真(絵本作家・名寄市立大教授)、松井晶彦(演出家)の4氏。実行委員会の坂井勝さんが進行役を務めました。

 午後3時から始まった選考会は、会員二十五人が見守る中、公開で行われました。

 まず、6点の候補作について、4人の選考委員が1点ずつ講評する形で選考会がスタートしました。この講評で2時間を要し、4人が推す詩集がおぼろげに見えてきました。

 10分の休憩を挟んで再開した選考会は、『卵権』(甘里君香・幻戯書房)と『湖へ』の2点に絞られる形で進みました。そして小熊賞の選考で毎回のように議論になる「小熊賞に相応しい、小熊的なるものとは何か?」の問答がビナードさんと松井さんの間で繰り返されました。

 その後も議論は続き、4時間半に達しようとするころ、選考会は「多数決にするか、それとも該当作なしにするか」のような雰囲気になりました。ビナードさんが、「該当作はある」と声を上げ、松井さんは「多数決はやめよう。全員一致を求めよう」と受けました。そして、「この詩人が何年か後に、新たな詩の境地を切り拓いてくれる可能性にかける」との一致点を見出し、姜さんの『湖へ』に第57回小熊秀雄賞を贈ることを決めました。

 受賞の知らせを受けた姜さんは、電話口で「(時間が遅くなったから)ダメだったんだと思っていました」と驚き、次のようなコメントを寄せました。

 ——敬愛する詩人、小熊秀雄の名を冠したこの賞の受賞の知らせを受け、とても厳粛な気持ちでいます。戦時中に多くの文学者が体制に迎合していく中で、孤立しながらも最後まで抵抗を続けた小熊秀雄の生き様に、今、改めて感銘を受けます。

 〈詩〉に戦争や虐殺を止める力があるとは私は思わない。しかし、それでも私は作品を書きながら、韓国人として歴史のなかで生きることや、虐殺で殺されてゆく人々のことを考えざるを得ません。私は縋(すが)る思いで詩を書いてきましたが、書けば書くほど私自身の根が揺るがされ、苦しみが増していきます。それでも、私はいつまでも〈詩〉を手離さずにいたいと祈っています。

 この詩集の制作にあたって、粘り強くそばで支えてくれたパートナーの大谷良太、そして私の詩集を選んで下さった選考委員のみなさんに限りない謝意を伝えたいと思います。——

 姜さんは、1996年、韓国・ソウル生まれ。2003年、母親と妹と共に渡日。日本とソウルとを行き来しながら、東京で育つ。17歳の時に、母親の仕事の都合でベルリンに移住。1年後、ドイツの高校を中退し、京都の大学に進学。19歳で結婚し、大学を中退。20歳で出産。2022年秋頃から詩を書き始め、『湖へ』は4カ月で書き上げた第一詩集。現在はアルバイトのかたわら、翻訳業を営む。京都市在住。

 第57回小熊秀雄賞の贈呈式は、5月11日(土)午後3時から、アートホテル旭川(市内7ノ6)で開かれます。受賞者には、正賞の「詩人の椅子」と副賞30万円が贈られます。

 また、記念講演として、道教育大旭川校の村田裕和教授が「小熊秀雄——『戦争の世紀』を生きた詩人」と題して話します。

 贈呈式の参加費は、700円。問い合わせは、市民実行委員会の氏家さん(090-5950-3328)へ。